もくじ
犬の嘔吐は、私たちとは違い比較的多く見られる症状のひとつですが、病気のサインの可能性もあります。
今回のコラムでは、犬の「嘔吐」について詳しく解説します。
犬の嘔吐について知ろう~「嘔吐」と「吐出」の違い~
犬が何かを吐くという行為は「嘔吐」と「吐出」に分けられます。
嘔吐~胃の中のものを吐き出す~
嘔吐とは、胃の中のものを吐き出すことをいいます。
嘔吐の前に吐き気を催すことが多く、震え・口の周りをやたら舐める・よだれが出るといった様子が見られます。
吐出~胃に入る前に吐き出す~
吐出とは、胃に入る前のものを吐き出すことをいいます。
多くの場合、食後すぐにフードが未消化の状態(フードの形状を保ったまま等)で吐き出します。
こんな症状の場合は動物病院に連れて行って!
犬の嘔吐は生理的なものと病的なものに分けることができます。
以下のチェックポイントを参考に冷静に判断しましょう。
お腹が空いているのかも?
空腹時やフードを急いでたくさん食べた後などは生理的な反応として吐くことがあります。このような場合はフードの量や与え方を調整すると嘔吐が治まることがあります。
病気かも?!~動物病院につれていくべき症状~
嘔吐物に血が混じる・嘔吐の回数が多い・異臭がする、嘔吐以外の症状(下痢や発熱など)がみられるなどの場合、何かしらの病気が原因となって吐いている可能性があります。できるだけ早く動物病院に連れて行きましょう。
犬が嘔吐したものからわかる~嘔吐の主な原因と対策~
嘔吐物の見た目や臭いなどの特徴からある程度嘔吐の原因や対処法が考えられます。
嘔吐物はすぐに処分せず、よく観察しましょう。動物病院へ行った際に獣医師に詳細な説明ができれば、診療の手助けになるかもしれません。嘔吐物の写真を撮っておくのもおすすめです。
嘔吐したものが茶色くドロドロしている場合
臭いを確認し、フードの臭いがする場合、食べたフードを吐いた可能性があります。
その後も吐かずに、元気と食欲がある場合はおうちで様子をみても問題ないことが多いですが、少しでも気になることがあれば動物病院を受診した方が良いでしょう。
嘔吐したものが茶色くサラサラしている場合
血液が胃液と混ざり、時間が経つと茶色く変色します。胃潰瘍や胃の腫瘍などによる消化管からの出血の可能性もありますので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
嘔吐したものが黄色く水っぽい場合
長時間空腹が続くと胃の中に胆汁が逆流し、それが刺激となり吐くことがあります。胆汁が黄色っぽい色をしているので、吐いたものも黄色くなります。
このような黄色っぽい液体は明け方やご飯の前に吐くことが多いため、寝る前に少量のフードを与えたり、ご飯の回数を増やしたりするなど、なるべく空腹の時間を作らないようにフードの与え方を調整してあげると良いかもしれません。
元気がない、他の症状もある、嘔吐が続くなどの場合は動物病院へ連れて行きましょう。
嘔吐したものが透明な液体や泡の場合
空腹時や水を一度に大量に飲んだ時に胃液や唾液、水を吐くことがあります。
このような場合は、なるべく空腹の時間を作らないようにしたり、水を何回かに分けて飲ませてあげると良いでしょう。
吐き気を催している時に泡を吐くことがあります。例えば、車酔いで吐き気を催し、泡を吐いてしまう場合には、車に乗る前に吐き気止めを飲ませたりして対策すると良いでしょう。
ピンクや赤い点々が混ざっている場合
口の中、食道、胃からの出血、また、気管や肺からの出血、肺水腫など呼吸器系の疾患により赤い液体を吐くことがあります。このような場合はすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
嘔吐したものから異物がみつかった場合
嘔吐物の中におもちゃの破片などの異物がみつかった場合、誤飲・誤食をしている可能性があります。そのまま様子を見ていると、腸閉塞や中毒症状など、命にかかわる事態になりかねませんので異物を発見したらすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
犬が嘔吐した際はここをチェックしよう!~動物病院に伝えるポイント~
犬が嘔吐をして動物病院を受診する際は、可能な限り正確に以下のポイントを伝えましょう。
獣医師が病気を診断していくうえで非常に重要な鍵となります。
嘔吐前に食べたものを確認
犬が嘔吐する前に食べていたものによって治療法が異なる場合があります。食べたもの、食べた可能性のあるもの、食べてから嘔吐するまでの時間をできる限り正確に獣医師に伝えましょう。
嘔吐した回数と時間を確認
嘔吐した時間や回数をメモしておきましょう。
嘔吐したものを確認
嘔吐したものの量や形状、混ざっている物、色や臭いを確認しましょう。
嘔吐したものを実際に動物病院に持って行ったり、写真に撮っておくと診断の手助けになります。
嘔吐以外の症状を確認
嘔吐の他に食欲不振や下痢、発熱などの症状がないかチェックしましょう。
犬の嘔吐から考えられる病気
犬の嘔吐から考えられる病気の一例をご紹介します。
消化器系の病気
胃炎
胃の粘膜に炎症が生じた状態のことで、誤飲・誤食によって起こることが多いです。
急性胃炎の場合、24時間程度の絶食・絶水をすると、多くは1週間以内に回復します。
急性膵炎
肥満犬や高脂肪食を食べている犬に多く発症します。
膵炎になると、嘔吐の他に元気消失・食欲低下がよくみられます。下痢・腹痛といった症状がみられることもあり、重症化すると死に至る可能性もあるため、早急な治療が必要となります。
腸閉塞
腸管での異物のつまりや腸管のねじれなどで閉塞した状態のことをいいます。
腸閉塞になると、嘔吐の他、細菌毒素によるショックや腸の壊死など重篤な症状がみられることがあります。
感染症
犬パルボウイルス感染症
激しい嘔吐と下痢を引き起こす感染症で、感染した犬の便を通じて感染します。
パルボウイルスの感染力は非常に強いため、感染動物の隔離と環境の徹底的な消毒が必要になります。
特に、免疫力の低い子犬は命にかかわる恐れもあるため注意が必要です。
腎臓・泌尿器系の病気
腎不全
腎機能が低下することにより、体内の老廃物の排せつがうまくできなくなる病気で、嘔吐はその症状のひとつです。他に多飲多尿・体重減少・貧血などの症状がみられます。
また、腎不全が悪化すると、尿毒症の症状が現れ、命に危険を及ぼします。
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監修者プロフィール
獣医師 藤沼 淳也
獣医学部卒業後、動物病院にて臨床業務に従事。
猫専門病院の院長を経て、現在はより良いペットの生活環境の構築に尽力。